久遠の絆
この世界に来て数日が経つと、帝国を取り巻く現状と言うものがおぼろげながら見えてくるようになった。


やはり全てが素晴らしい世界などどこにもない。


“戦争”はどこに行ってもなくなりはしないのだ。






あの日『次元を越える船』が空港に着陸してからすぐに、蘭はストレッチャーに移され船を下りた。


そしてそのまま車に乗せられ、豪奢な邸宅へと連れて来られたのだった。


街を行く人も屋敷の中にいる人も、皆お伽話の様な格好をしている。


(地球の中世と現代が混在している世界だ、ここは。)


そう思うと蘭は不思議な感覚に囚われた。


やはり夢を見ているのではないかとさえ思えてくる。


けれど、これは現実に起こっていることだ。


それを改めて確信する。


一人物思いに耽っていると、心の中でそんなことを繰り返した。


蘭のいる邸宅はカイルの別荘らしく、使用人たちも皆彼に仕えている人達ばかりだった。


皇帝のいる宮城へ上がる予定は今のところない、とカイルは言った。


蘭がこの世界に慣れるために、しばらく時間を置くということらい。


(まあ、嬉しいけど、ね)


知り合いはカイルとニアスくらいで十分。


煩わしい人間関係など真っ平御免だった。


二度ほど、ご機嫌伺いにやって来たカイルの第一声はいつも、「なかなか伺うことができず申し訳ありません」というものだ。


辺りを払うような美貌に、憂いまで加わわった彼が現れると、蘭の世話役の女官達はうっとりしてしまい動きが鈍る。


(それも仕方ないよ)


と蘭は思う。


絵か彫刻にでもして飾っておきたいくらいなのだから。


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