久遠の絆
「だから、何度も言っているように、わたくしはあなたと結婚するつもりはないの!」


語気強くそう言うアニーシャに、カイルは困ったように眉を潜めている。


「アニーシャ……」


「カイルもカイルだわ。どうして好きでもないわたくしと結婚するの?」


考えられないと頭を振るアニーシャに、傍らで静かに座っていた元皇帝が口を挟んだ。


「アニーシャ。カイルも困っているよ」


「お兄さまは黙っていて」


「アニーシャ……君はカイルとなら結婚しても構わないと言ってたじゃないか」


「それとこれとは……」


「君が即位しない以上、誰かが皇位を継承しなくては本当に帝国は帝国ではなくなってしまうんだよ。それがわからない君ではないだろう?」


「……」


「アニーシャ」


口を尖らす彼女に、カイルが静かに声を掛けた。


「勿論形ばかりの結婚でいいのです。あなたが嫌だと仰るなら一緒に住まなくてもいいし、夫婦としてのすべてを排除していい。ただ私が皇女の夫であるという事実がほしいのです」


「……」


「帝国をこのような状態に至らしめた責任は私にある。私はそれをなんとしても打破したい。そのために少しだけ、あなたの協力を頂きたい。そう申し上げているのですよ」


「……結婚て、そんな簡単なものじゃないわ」


「女性にとって結婚が如何に重大なことかは知っているつもりです。しかし国の危機である今、皇女としての責任にも思いを致していただきたい。そう思うのですよ」


「カイルって……以外に強引なのね」


「そうでしょうか」


「そうよ。もっと温和な人かと思っていた」


「ふふ……カイルとて、根は軍人なのだよ。目的のためなら多少強引にもなろう」


「兄さまはいつでもカイルの味方なんだから」


「そんなことはないよ。カイルとの結婚を勧めるのは、君にとってもそれが最良のことだろうと思うからこそ、なんだから」


「……」


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