久遠の絆
「誰もいないね」


堂々と歩いても警報機の音すらしない。


森の小道はすでに雑草や木の若芽に覆われ、歩きにくく、その木々の隙間から時折見える屋敷の壁には蔦が這っている。


ここは本当に、見捨てられた屋敷になってしまっているのだ。


「全部、ダンドラークに移ってしまったのね」


「ああ……」


それでも小さな声で会話しながら歩いていると、小さな小屋が見えてきた。


いよいよ木々に包まれるように建つ小屋だった。


「あそこだよ、きっと」


「うん」


小さな窓が一つあるだけの小屋。


今にも崩れそうな、いい加減な造りだ。


「あんなところに、ナイルターシャさまが……」


男は辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、悔しそうに唇を噛んでいる女を促した。


「行こう」


その小屋には扉はなかった。


入り口は窓しかない。


大人が一人やっと通れるくらいの、小さな窓。


「俺が先に行こう」


言って、男は服の中からダガーナイフを取り出すと、口に銜えた。


窓から中を見ると、人影はない。


(本当にここか?)という思いが一瞬過ぎるが、一か八かやってみるしかないのだ。


調べると、嵌め込まれただけの窓だった。


窓枠を一度強く叩いただけで、ガコンと難なく外れてしまった。


「ホントに、いい加減ね!」


女が不満の声を上げるのを聞きながら、男は窓のあった空間に飛び上がった。


そして、彼が見たものは。

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