ホテルの“4つのクリスマスストーリー”

わたしはといえば29歳になったばかりで華の20代も終わりに差し掛かっているというのに、結婚なんてほど遠いどころか、なんとも不毛な恋をしている。

会社の先輩と、肩書きがなく定義し難い関係に陥っているのだ。先輩には彼女がいる。それなのにまるで恋人同士のように毎日連絡を取り合い、月に1度日帰りのデートをする。

ダメなことだとわかってはいても、まだプラトニックな関係であることが罪悪感を薄めて、わたしたちは絆を深めるのに躍起になっていた。

夕方からの顔の疲れが尋常じゃなかったり、徹夜ができなくなったり、赤い傷が茶色くなって肌色に戻るまでの時間を長いと感じるようになったりすることで、確実に年を取っていると実感するここ数年だ。そろそろ自分の首を絞めるようなことはやめなきゃなと思う。

だけど着々と老いている体に反して心はまだどこか少女みを帯びていて、突然自分の目前に現れてくれるはずの白馬に乗った王子様を待っていたりする。


ああ、わたしはこの先どうなるんだろう。今から老後が心配で、たまに泣きそうになるんだよな・・・


永遠の愛をわざわざ約束させる儀式が一通り終わり、チャペルを出て今日の主役を待つ。

新婦が出てきて、みんなに祝福されながら、今日は彼女のためだけに敷かれたレッドカーペットをゆっくりと歩く。

胸元にビジューの縫い付けられたドレスが陽光で眩しいくらいに輝き、白い光線が四方に伸びていた。

その様はなんだか彼女が「人生の勝者ビーム」を振りまいているようで、服から少しばかり露出されたわたしの肌が、灼けて痛いような気さえした。


『おい』


物思いに耽っていたら突然、思い切り肩をつかまれた。びっくりして振り向くと、見慣れた・・・けれど記憶を探ってたどり着くその顔より、凛々しく成熟した表情を携えるスーツ姿の男性が立っていた。
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