ふたりのアリス
自立したいという気持ちは確かにあったが、一番は白鷺に帰りたくなかったのだ。
きっと「神宮寺さんは結局、向こうでは駄目だったから帰ってきた」と陰口をたたかれるに違いない。鳩子はプライドにかけて、それだけは耐えられなかったのだ。

そして、父と顔を合わせたくなかった。

父とはあの日から一度も会っていないが、神宮寺邸にいたのでは顔を合わせる可能性もある。
今は面と向かって父と向き合う事は出来そうになかった。

父と鳩子の橋渡しを源三がしてくれている。源三が特に何も言わないという事は父は最早、私に感心がないのだろう。


数日後、源三から電話が架かってきた。鳩子の祖母の友人が理事長をしている大学に編入したらどうか。近くに安い物件もあると勧められたのだ。正直、白鷺でなければどこでも良かった鳩子は二つ返事でOKした。


---城南大学


明日から通う大学の名前だ。
幼稚舎から女子校だった鳩子にとって共学は初めての体験だ。不安が募る。

様々な思いが交錯する中、鳩子は眠りに就いた。
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