100回の好きの行方
ー100回の好きーの行方
 篤人は、麻嘉の実家を見て驚いていた。

 大きな門に、高い石垣の外壁。門から見えるのは家ではなく、だだっ広い日本庭園だ。

 門の横には、でかでかとー朝倉霧島流ーと書かれている。

「めちゃくちゃ、俺、違和感あるし。」

「ごめんね、車出してもらって。」

「あぁ……。はじめから送るつもりだったからいいよ。」

 ラブマルシェで買い物中に電話があったあと、篤人のアパートまで車を取りにいき、送ってもらったのだ。

 挨拶だけすると言って聞かない篤人を、家に招き入れるため、入り口に回ったところだった。

 中に入ると一直線に進む麻嘉のあとを、篤人は付いていくが周りのなっている建物や庭が気になり、足を度々止めてしまう。

「後で、案内しようか?」

「えっ……ああ。」

 不意に声をかけられ、篤人は当初の目的を思い出しハッとした。

 玄関が見えて来ると、入り口が開いており見覚えある男性が立っていた。

 兄の嘉也だ。

「悪いな、デート中に。」

 麻嘉と同じ顔をして笑う嘉也は、とくに、怒っている様子もなく二人に話しかける。

「すみません!無断外泊させてしまいました。」

 篤人が勢いよく頭を下げると、嘉也はケラケラ笑いだす。

「大丈夫だよ。父と二人で、ようやく春が来たかぁって話してた位だし!」

 そんなふうに言われたためか、麻嘉は苦笑いした。
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