100回の好きの行方
 どっちなのかと考えてると、篤斗は営業用の鞄から箱を取り出した。

「サンプルで良かったら、丁度いいのあるから、着けてやるよ。」

「えっ!?着けるって……。」

 言い終わるより先に、会場のすみに引っ張られ、向き合う形で、サンプルを二つ当てられる。

 向き合う形でドキドキしてうつ向いていると、

「顔、あげろよ。」

 耳もとで囁かれビクンッとしてしまう。わざとじゃなくても男性に、しかも好きな男性にそんな風にされると、胸がドキドキしてしまうのが女心だ。

 思いきって顔をあげると、少し身を乗り出しネックレスの金具をする篤斗の距離が凄く近いことに、麻嘉は、恥ずかしさと、嬉しさが入り交じった気持ちになる。

「さっ、出来た。ほら、行くぞ。課長たち待たせてるから。」

「あっありがとう。」

「ちゃんと営業しろよ!自分のデザインなんだからさ。」

 その言葉を聞いて、今までのドキドキした感情が一気に萎むのが分かる。

 "勿体ない"その、セリフは、自分が期待していたものじゃないんだ。

 そう思うと、みんなと合流する自分の笑顔が張り付いたものになっているのに、麻嘉は気がついた。

「……せっかく、頑張ったのに。」

 その呟きはずいぶん前を歩く篤斗には、聞こえなかった。
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