サンタクロースは君だった
* * *

 レオが目を開けると、ひかりはまだ目を閉じていた。綺麗なショートカットの黒髪がさらりと揺れ、清楚で美しい彼女の良さがより際立った。
 手から伝わる温もりが愛しくて、嬉しくて。そしてその気持ちがひかりと同じだったと知ってそれもまた嬉しくて。嬉しさばかり積み重ねた矢先の、ひかりの思いやりが少しだけ刺さった。ひかりはそういうことを気にしていたのか、と。

 自分のこれまでの売り方では、彼女をつくることはもちろんできないであろうことはわかっていた。そして、音楽活動をしていきたいという自分の方針が少しずつ曲げられていくことも知っていた。だからこそ、辞めるしかないと思った。
 ひかりのレオになりたいのは、ひかりのためじゃない。自分のためでしかないことはわかっていた。それでもどうしても手を伸ばしたかった。

 レオの願いはたった一つだ。

(…ひかりちゃんと、一緒にいられますように。)

 これは願いでもあり、自分で頑張ることでもある。

 ひかりが目を開けた。

「…ひかりちゃん、行こうか。」
「…はい。」

 そっと握った手は、優しく握り返された。赤く染まる耳が髪に隠れていなくて可愛い。

「ひかりちゃんは朝ごはん何食べた?」
「えっと、お雑煮を…。」
「わー!いいなぁ!そういうお正月っぽいもの、全然食べてないや。」
「…そうかなって思って、材料を多く買ったからありますよ。作りに行こうって…思ってたんです。」

 段々小さくなる声に比例して赤くなる頬もレオには可愛く見えてしまう。

「ありがとう、ひかりちゃん。」

 何度ありがとうと言っても、本当は足りないくらいの勇気と気持ちを貰っている。ひかりは覚えていないかもしれないが、10年前も、そして最近も。
 たくさんのありがとうの気持ちを込めて、細い手を少しだけ強く握った。
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