サンタクロースは君だった
* * *

「ただいま、えっとひかりちゃん…。」

 ドアを開けると、部屋はとても静かだった。小さな寝息が聞こえてくる。

「寝てる…。」

 音を立てないように近付いて、ベッドの横に腰をおろした。ひかりの寝顔は初めて見る。サラサラの髪が少しだけ揺れた。時折眉間に皺が寄る様子を見るに、体調的には結構辛いところだったのであろう。

「…無理しなくていいのになぁ。」

 そんなことを言いつつも、結果的にはひかりが無理をしてまで来てくれたことによってこうして寝顔を見ることができているのだから、ひかりには感謝しなくてはならない面もある。
 そっと、その髪に触れた。愛しさが静かに込み上げて、優しく笑える自分がいる。

「…微熱、…チョコレート。ひかりちゃんから貰った気持ちが、僕に曲を書かせてくれるんだなぁ。」

 頭に旋律が溢れて、歌詞が自然にのっていく。公共の電波に乗せて歌うことはもうないけれど、ひかりが望むなら歌いたい。
 口ずさむメロディ、デタラメな歌詞。レオの口から出ては消えていく音楽が静かに小さく部屋に響く。

「ん…。」
「あ、ひかりちゃん、起き…。」
「す…き…。」
「え?」

 思わず振り返る。ひかりの目は閉じたままだ。

「すき…れお…くん…。」
「え…えぇ…?」

 急展開だ。これは告白だ。それもまさか、ひかりからの。

「…うた…。」
「え…?あ…うた、…歌ね。オッケー…平常心。ていうか寝言だし、そもそもひかりちゃんが僕をいきなり好きなんて言うはずが…。」

 ない。ないのだ。まだ、ひかりの心に触れていない。ただ、これはあまりにも大きな衝撃だった。ひかりの声で聞く、『好き』の二文字は。

「…インパクトが…大きいな…ひかりちゃんの『好き』は。…今日は練習…本当に聞けたときは、…もっとスマートに。…って無理か。」

 無理に決まっている。ひかりの前でスマートな自分でいられるはずもない。ペースは乱されてばかりだ。そもそもレオがひかりを好きすぎる。

「…仕事しよ。」

 頼まれていた曲が、今なら書けるかもしれない。

『微熱チョコレート
顔を真っ赤にした君の『好き』が、チョコよりも甘く溶けたんだ
チョコもやっぱり嬉しいけれど
チョコがなくても 本命になれれば嬉しいんだけどな
まだまだそれは 先の話 君の心に触れてから』
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