栞の恋
ちょうど前の女子高生の会計が終わり、レジの女性店員に呼ばれ、彼の後ろを通って2番目のレジに向かう。いつも通り、支払いを終え、購入した本にカバーをかけてもらっている間に、例の黒縁眼鏡さんが会計を終え、大きな紙袋を下げて、栞のすぐ後ろを通り、書店を後にする。結局、当然のことながら何事も起きずに過ぎた。まぁ、現実なんてこんなものなのかもね…と、悟っていると

『しおりの色は何色になさいますか?』

店員に問われ、書店のサービスで、この時期いろんなカラーのしおりがもらえることを思い出す。この書店には、随分通い詰めているので、もう既に全色そろっているのだけど、折角なのでお気に入りのブルーのしおりをお願いする。
実は、つい先日あの高橋さんに、気に入ってたブルーのしおりにいたずら書きをされてしまい、ちょうど真っ新なものが欲しかったところだった。

『さっきのお客さん?』

ふと、隣のレジの店員が、ブルーのしおりを差し出す目の前の店員に、何やら困った様子で話しかけていた。

『うっかり渡しそびれてしまって…』

こちらのレジはもう済んでいるので、もう立ち去れるのだけど、なぜかその場を動けずにいた。
どうやら、例の黒縁眼鏡さんに、このお店のポイントカードを渡し忘れてしまったようだった。
当然あの量の本を購入しているのだから、かなりのポイントが貯まったはず。しかも渡しに行こうにも、現在このフロアの近くにいる店員はこの2名しかいないようで、追いかけて渡すべきか迷っているようだった。
その間にもレジには、会計待ちの列が連なっていく。

『あの…』

思い切って声をかけてみる。

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