ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side

陽向先生にガッシリと固定される。

その瞬間、この前の事が頭を過ぎった。

”ニタニタとした男の人たちが私を押さえつけて暴力を振るってくる。”

涙が出てくる。

嫌だ……!!

また、殴られちゃう、やだ、やだ、やだ……

私は、パニックになって、必死に動いて抵抗していると、楓摩が何かを叫んでいる。

やだ……

「朱鳥ちゃん、抑えちゃってごめんね……」

そう言われて、ふと、我に返った。

けど、やっぱりさっきの事を思い出してしまう。

「………………」

「嫌われちゃったかな?」

私は、楓摩の背中にギューと抱き着く。

「………………」

「朱鳥、陽向も謝ってるでしょ?お返事くらいしてあげたら?」

楓摩は、私を抱っこして、顔を覗き込んで来た。

そう言われても、怖いんだもん……

黙っていると、楓摩も諦めたのか陽向先生に御礼を言って、陽向先生は帰っていった。

楓摩も必死に慰めてくれるけど、そうじゃない…………

病室に帰ってからも、泣いていた。

頭の中を、あの日の記憶がグルグルと回る。

嫌だ……やぁ…………やめて…

楓摩は、仕事があるらしく、行ってしまった。

それで、余計に悲しくなって、寂しくなって、私は、ずっと布団に潜って泣いていた。












「朱鳥、朱鳥ー、顔だして?もう、お昼だから、ご飯食べよ?」

いつの間にか来ていた楓摩に声をかけられる。

少しだけ布団から、顔を出す。

そこには、心配そうな楓摩の顔があった。

「朱鳥、どうしたの?いつも、そんなに泣かないでしょ?何かあった?」

「………………」

「俺に、話してくれない?」

「…………思い出したの……」

「ん?何を?」

「……この前の事…………」

言葉に出すと、より鮮明に思い出してしまう。

「……そうだったんだね………………ごめんね、トラウマ思い出させちゃったんだね…」

コクン

「ごめんね……。でも、大丈夫だからね、陽向や俺は、朱鳥にそんな事しないから。大丈夫。」

楓摩は、俯いている私の頭を撫でてくれる。

私は、楓摩に抱き着いていた。

そして、楓摩の肩に顔を埋めて泣いた。

「……大丈夫だよ…大丈夫。」

そういって、ずっと背中を摩ってくれている。

すると

「…朱鳥ちゃん……さっきは、ごめんね。」

知らぬ間に陽向先生が来ていた。

楓摩も、私の様子を見ている。

”ハハッ、見て、震えてやんの”

そう言って殴られた時の痛みを思い出す。

陽向先生は、そんな事しない。

知ってる。

……けど。

「朱鳥、大丈夫?」

コクン

「朱鳥ちゃん……ごめんね。」

「……………………大丈夫…」

すっごく小さな声になっちゃったけど、ちゃんと言えた。

それを見て、楓摩も微笑んでくれた。
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