ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side3

コンコンッ

ガラッ

「愛依ちゃーん、入るよ?」

そっと、愛依ちゃんの病室に入る。

今日は、楓摩の許可も貰って、愛依ちゃんの病室に来ている。

病室に入ると、愛依ちゃんはベッドの中で震えていた。

私の事に気付いていないのか、ずっと泣いているようだ。

「……グスッ…………怖いよぉ…あたし、死んじゃうの……?……やだよぉ………あたし、まだ死にたくないっ………………でも…手術は怖いもん…………どうすればいいの……」

「…愛依ちゃん……」

そっと声をかける。

「えっ…………朱鳥、ちゃん?」

愛依ちゃんは驚いた様子で、涙を拭いている。

「ごめん。嫌な所見せちゃったね。ごめん、もう大丈夫だから。」

「ダメ。大丈夫じゃない!!」

「へ……」

自分でも、何を言っているかわからなかった。

けど、愛依ちゃんを守りたい一心で、

助けてあげたい気持ちで、私は叫んでいた。

「…そんなに泣いてて、全然大丈夫じゃないじゃん!!なんで相談してくれなかったの?愛依ちゃんが辛いなら、私も助けになりたい!!私…愛依ちゃんを救いたい!!」

「朱鳥ちゃん…………」

「ごめん、大声出して。」

「ううん、ありがとう。本当に大丈夫じゃないよね。あのね、あたし、手術しないと、もうすぐ死んじゃうんだって……でも、あたし、手術したくない…………」

そう言った愛依ちゃんの目には強い恐怖の色が浮かんでいた。

「なんで……?」

「あたし、手術が怖いの。…………お父さんがね、手術で死んじゃったんだ。絶対に大丈夫って言われてたのに、簡単な手術だからすぐ終わるって言ったのに………2時間経っても、3時間経っても手術は終わらなくて、結局6時間して、お父さんは死んでたの。」

「………………」

「それで、あたしも死んじゃうんじゃないかって……心配なんだ。…………陽向先生の事、信用してない訳じゃないけど、それでも、やっぱり怖いんだ。」

「そっか……」

愛依ちゃんにそんな過去があったなんて。

きっと、この事は楓摩や、陽向先生は知らないんだろう。

だから、きっと困ってた。

「あたし、ダメだよね。……しっかり、陽向先生が治そうとしてくれてるのに…………ワガママばっかりで、迷惑かけてる…」

ガラッ

「へぇー、そんな事あったんだ。」

そう言って入ってきたのは陽向先生。

「陽向先生……」

「愛依、それで悩んでたの?もっと、先に言ってよ。俺も、そういう事なら相談に乗ったのに。」

「ごめんなさい…………」

「謝らないで。大丈夫だから。そうだよね、怖いよね。その事情も知らずにごめんね。」

「ううん……」

よかった、これなら、なんとかなりそう。

私は、2人を邪魔しないように、そっと、病室を出た。
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