ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ー、おはよー」

「…おはよ……」

楓摩と一緒に泣いた日から3日。

ついに、治療を始める日が来てしまった。

もちろん、気分は憂鬱。

これから、もっと辛い事があると考えると恐怖すら覚える。

「朱鳥、今日はここで診察をしてから部屋を移動するね。部屋に着いたらすぐに点滴で治療を始めるよ。」

楓摩も、少し悲しそうな顔をしている。

「服、捲って」

黙って指示に従う。

3分もしないうちに診察は終わった。

「うん、いいよ。じゃあ、ゆっくりでいいから荷物まとめて行こうね…」

コクン

私は、ゆっくりベッドから下り、荷物を取る。

服などの生活用品が入ったリュックを背負い、楓摩がくれたイルカの抱き枕を持つ。

「よし、じゃあ、行こっか。」

楓摩と手を繋ぎ病室を出る。

楓摩は、私に合わせて少しだけ歩く速度を遅くしてくれている。

私は、歩いている途中、所々で怖くなってしまって立ち止まってしまった。

それでも、楓摩は、優しく待っていてくれた。

いよいよ、無菌室に入る扉の前に来て、また足が止まる。

ここまでは、なんとか自分に言い聞かせて来れたけど、やっぱり無菌室を目の前にすると、恐怖が込み上がってくる。

「……朱鳥、大丈夫だよ。大丈夫だから、おいで?」

楓摩は、優しく手招きをしている。

でも、私は怖くて動くことができなかった。

自分では、行かないといけないことは分かっている。

だけど、足が進まない……

「朱鳥、抱っこしてもいい?」

…コクン

そう頷くと、楓摩はニッコリ笑って私を抱き上げた後、そのまま私を病室まで連れていった。
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