ある雪の降る日私は運命の恋をする

朱鳥side2

目を覚ますと朝だった。

もう、回診は終わったのか点滴は変えられていて、テーブルの上にはご飯と置き手紙があった。

置き手紙には、"食欲があったら無理しないで食べてね"という楓摩からのメッセージがあった。

昨日よりは、体が楽な気がする。

それに、昨日はお昼ご飯も夜ご飯も食べていないからお腹が空いた。

少し起き上がって、ご飯に手を伸ばす。

メニューは、私の体調を考慮してか、お粥とゼリーがあった。

少しお粥を口に含んでみる。

案外、食べれそう。

そのまま、少しずつ食べ進める。

自分では、かなり食べたような気がしたが、全体を見ると3分の1も減っていない。

もう、これ以上は無理そう……

それから、少し水を口にして、私はまた、ベッドに横になった。

でも、寝っ転がっていても暇だなと思い、前に一時帰宅した時に楓摩が買ってくれたマンガを読むために少し立ち上がって隣の棚にあるバッグを取る。

少し高い所にあったから、背伸びをしてやっと、取れた。

と思ったら……

グラッ

いきなり視界が歪んだ。

そのまま、床に倒れる。

なんとか、体を支えて壁によしかかって座ることは出来たが、目の前がグルグル回って、ベッドに戻る事はできない。

気持ち悪くなって、吐きそうになる。

床に吐いたらダメなのはわかってるから、我慢する。

だけど、我慢にも限界があって、吐いてしまう。

「オエッ…………ゲホッ…ゴホッ…」

ナースコールは、ベッドの上。

それに、ここからは正反対の場所にある。

気持ち悪い…………

さっき食べたばかりのご飯もすべて出してしまう。

助けを呼ぶ事も出来ず、そのまま私はしばらくそこに座っていた。

何分くらい座っていたのか、だんだん寒くなってきた。

体が震える。

全身の震えが止まらない。

コンコンッ

ガラッ

「朱鳥ちゃんー、やっほー…って朱鳥ちゃん!?…痙攣起こしてる!!大丈夫!?朱鳥ちゃん、意識保って!!」

陽向先生……

「今、楓摩呼ぶね!!」

そう言うと、陽向先生はナースコールを押して何か言っている。

寒い…………

陽向先生は、私をベッドに寝かせて布団を掛け、温めようとしてくれる。

しばらくして、看護師さんが来て毛布と点滴を持ってきた。

いっぱい毛布をかけられて、点滴を刺される。

また少しして、ドアが勢いよく開いて楓摩が走ってきた。

「朱鳥っ!!大丈夫!?」

楓摩が来た頃には、もう震えは収まっていた。

ただ、体がフワフワする。

「朱鳥、熱計るね。」

ピピピピピッ♪

「……41.5…かなりヤバイな…………」

「楓摩、また昨日の解熱剤用意するか?」

「うん、そうだね。お願い。」

そう言うと、陽向先生は急ぎ目に病室を出ていった。

楓摩は、心配そうな顔で私の手を握っている。

「ごめんね、外来が長引いちゃって早く来れなかった……ごめん。」

私は、ボーッとする頭で、何を考える事も出来ず、そのまま、楓摩の顔をただ眺めていた。
< 239 / 505 >

この作品をシェア

pagetop