ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side3

はぁ…………

朱鳥の前で泣いてしまった。

俺よりも年下で、俺より小さいのに、俺よりいっぱい我慢して、辛そうなのを頑張って耐えている朱鳥の姿に胸を打たれてしまった。

でも、本当に泣きたいのは朱鳥のはずなのに、俺が泣いてしまっているのが恥ずかしくなって、俺は逃げるように病室を出てきた。

ほんと、大人気ないな……

そんな事を考えながら、検査の道具を取りに行く。

一応、無菌室にずっと居たとは思うんだけど、熱も高いし感染症だったら怖いから検査をしておく事にした。

採血と、尿検査、あと一応インフルの検査キットも。

道具を取って、朱鳥の病室に向かう。

ガラッ

「朱鳥ー、持ってきたよー」

病室に入ると、朱鳥は何をするでもなく、ただ天井を眺めていた。

俺が病室に入ると、俺の方を向いた。

でも、何か様子がおかしい気がする。

「朱鳥、大丈夫?1回、熱計ってもいい?」

コクン

ピピピピピッ♪

40.8

「うわ、また上がったね…。ねぇ、朱鳥、今さ、辛いと思うけど、取りあえず血液検査とインフルの検査だけさせてくれないかな?」

コクン

「ありがと。じゃあ、ちょっと腕貸してね…」

朱鳥は、何も抵抗せずに、手を出してくれた。

もしかすると、少しだけ意識が朦朧としているのかもしれない。

「ちょっと、痛いよー」

注射針を刺して、血液を抜いていく。

ある程度採って、止血をする。

「よし、いいよ。ごめんね、痛かったね。」

コクン

「あと、インフルエンザの検査だけさせて?いい?」

コクン

「鼻に綿棒入れるから、少し痛いけど動かないでね。」

コクン

朱鳥は、動くこともせずに、黙って検査を受けてくれた。

「よし、おっけー。取りあえず今日はこれだけにしとこっか。今日は、もう辛そうだし寝てな?」

コクン

そう頷いたのを確認して、俺はもう1度病室を出た。
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