ある雪の降る日私は運命の恋をする

楓摩side2

「じゃあ、朱鳥、上の服脱いでそこのベッドに座って、その机に突っ伏して?」

怖がる朱鳥を安心させられるように、いつもより優しく声をかける。

でも、そりゃ怖いよな……

自分だって、胸水が溜まってるからって自分の肺に針を刺されることになったら、怖くて逃げたくなる。

そんなことを思いながら、ドレナージという処置の用意をする。

用意をして、消毒をしてから、朱鳥に声をかける。

「朱鳥、これから局所麻酔打つね。ちょっと痛いけど我慢だよ」

注射器を取って、朱鳥の肌に刺す。

朱鳥は、注射が苦手なのに、病気のせいで何回もすることになって、いつも可哀想に思う。

だけど、そうしないとこの後辛くなるのは朱鳥だもんね……

いつもそう言い聞かせて処置をする。

2本ほど注射を打ってから一旦手を置く。

「朱鳥、大丈夫?」

コクン

朱鳥は、少し目に涙を浮かべていたが、頑張って泣くのを耐えていた。

「偉い。もう、麻酔終わったから、後はもう痛い事ないからね」

そう言って、次の用意をする。

「朱鳥、痛かったらごめんね」

そう言って、ドレナージのチューブを入れる。

朱鳥は、フルフルと震えていた。

チューブをテープで固定して、それから俺は手袋を脱いで朱鳥の頭を撫でた。

「朱鳥、頑張ったね。後は、水抜くだけだから、そこでジッとしてて。寝ててもいいから。」

コクン
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