ある雪の降る日私は運命の恋をする

病状

この前の治療が終わり、先週、骨髄検査もした。

今回は、一時帰宅はなしだったけど、基本的には病院内では自由にさせてあげていた。

そして、今日、この前の治療の結果が出た。

前よりは、良くなっている。

…でも、まだ完治には遠い。

そんな感じ。

病状は改善していっているものの、もっと良くならないとダメだ。

次は、また、もう少し強い抗がん剤を使わないといけないかもしれない。

そしたら、病状はもう少し良くなってくれるだろう。

でも、朱鳥の辛い顔をこれからまた、何回も見ることになるんだろうな…………

仕事柄、患者さんの辛そうな表情は、何度も見たことがあった。

けれど、その患者さんには、ほぼずっと傍に居てくれる人がいた。

それは、親。

俺は、小児科医だから、子供しか診ないけど、やっぱりそこには、ほとんどの場合親がいた。

子供が苦しんでいるのを見て、辛そうにしてる子供を頑張って励ます親がいた。

だけど、朱鳥にはそれがいなかった。

いないだけじゃなくて、その"親"の代わりとなるはずの存在に苦しめられ、傷つけられていた。

その傷は深く、もう関わらなくても良くなった今でも、それによって苦しめられている。

だからなのかはわからないけど、俺には朱鳥が他の患者さんより数倍苦しんで、辛い思いをしているように見えた。

もしかしたらそれは、俺が朱鳥の事を好きだから、そう見えているだけなのかもしれない。

けど、やっぱり、誰よりも苦しそうにしているように見えた。

実際、朱鳥の同じ病気の子は何人もいる。

でも、その子達は、副作用が辛くても、何かしら、毎日、笑顔が見えていた。

辛くても、お母さんや、お父さんが来たら、とても嬉しそうな表情をして、笑っていた。

だけど、朱鳥は毎日どころか、1週間、ほとんど笑顔を見せなかった。

ほぼ毎時間、泣いて、苦しんでいた。

俺は、それを見るのが辛かった。
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