密かに恋焦がれて

でも……ずっとこのままでいいの?
帰りのタクシーの中、自問する。
今の状況を変えようと動けば自滅する事は解っている。
やっぱりこのままでいたいと思ってしまう。
ヒロの行動に刺激を受けて変われそうな気がしたのにダメだった……。


「琴美」

「えっ?」

「家に着いた」

いつの間にかタクシーは家の前に停まっていた。

「あっ、うん」

「お前、大丈夫か?」

「別に大丈夫だよ、そんなに飲んでないし……疲れただけ。お兄ちゃんはこのまま向こうに帰るんだよね?」

「ああ、そのうち家の方にも顔だすよ」


「解った言っとくね」

琴美は降りると乗ったままの康成に軽く手を振ると直ぐにタクシーは走り去った。


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