痛快! 病ンデレラの逆襲

いつものように社長の温もりが私を包む。
独りじゃない。そう思った途端、ポロリと一粒涙が零れ落ちる。
それに気付いた社長が掌でそれを拭う。

「やっと泣けたな」

社長は私を抱きかかえるとお千代さんの部屋を出る。
そして、椅子に腰を下ろすと私を膝に座らせ横抱きにし、次から次へと零れ落ちる涙を掌で拭う。

「葬儀の時も、お前は感情が無くなったかのように一滴の涙も零さなかった。俺はそれをとても心配していた。人間は喜怒哀楽を失くすと心が壊れてしまう」

良かったな、と社長はヨシヨシと頭を撫でる。
真冬のように凍えていた心に温かな日差しが差し込み、冷たい氷の塊が徐々に溶け出す。

溶けた氷は涙となって後から後へと溢れ出す。
そして、とうとう堪え切れなった私は、社長に縋り付きウワァァァと声を上げ泣き出した。

社長はそんな私を黙って抱き締め、髪を撫でていてくれていた。
いつまでも、いつまでも。

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