それはきっと、君に恋をする奇跡。


ハルくんがここに居ないのは分かってる。


でも、同じ筆跡の人はふたりといないって聞いたことがある。


どんなに似ていても、ひとりひとり絶対に違うんだって。



だけどあたしにはわかる。


あれだけ文通でやり取りして大好きだった文字。


これは絶対、ハルくんの字……。



どうしてハルくんの字がこの原稿用紙に……?



急いで用紙の隅から隅までその文字を追う。


内容は何も入ってこないけど。


この「あ」も、この「な」も、この「き」も。


ひとつひとつが癖があって……。


間違いない、これは絶対にハルくんの字だ。


男らしくて力強くて……それでいて丁寧な文字。



だけどハルくんは……ここには居ないでしょ……?


なのにどうしてハルくんの文字を持つ論文がここにあるの?

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