それはきっと、君に恋をする奇跡。


「水瀬、手が治ったら覚悟しておけよ。たーっぷり掃除させてやるからな」



勝ち誇ったような宣言に、蒼がゲッと声をあげる。



蒼の論文はあたしが盗った。

そして今、鞄の中に入ってる。


……ごめんね、蒼。


そう思いながらも、ここで出すことはやっぱり出来なかった。



「んだよー、俺マジで書いて出したのに」



誰にでもなく零す言葉は、ほんとうに悔しそうに聞こえた。



書いて出した……。


そんな言葉をもらすくらい。

本当に自分で書いてなかったらそんなこと言わないよね?

だったら、ハルくんの代筆なんてあたしの妄想に終わる。


蒼の筆跡が、ハルくんに酷似しているだけ……?

じゃあ、"三橋"の謎はどうなる……?

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