会いたい
午後は、二人でのんびりすることにした。

MAKIDAIは、病室のソファに腰掛けタブレットで動画を見ている。

楓は、その隣に腰掛け本を開いた。

「何、読んでるの?」

MAKIDAIが覗き込む。

「取りたい資格があって…」

と表紙を見せる。

「食育アドバイザー?」

「うん。まだ、他に薬膳と食生活、発酵食品も取りたいんですけどね」

「そんなに?」

MAKIDAIが驚く。

「いつとれるか、分からないけどね」

楓は、苦笑い。

「でもね、MAKIDAIさんがリハビリ頑張ってるんだから、私も何か頑張らなきゃって思って」

はりきる楓を見てMAKIDAIは、

「ん?いつも頑張ってるじゃん。仕事と家事と子育てだけでも大変なのに、まだ頑張る?」

楓が無理しているのでは?と焦るMAKIDAIだったが、

「うーん、頑張ってるのは気持ちだけで、本を広げたらすぐ眠くなっちゃうの」

と、その言葉でホッとする。

「なるほどね。じゃあ、今日は俺の肩貸してあげるよ」

MAKIDAIは、笑いながら楓の頭を自分の肩に乗せる。

「ふふ、ありがと」

楓は、MAKIDAIの肩にもたれかかりながら本を広げた。

はじめは少し緊張して落ち着かなかった楓だったが、宣言通り、30分も経たないうちにページをめくっていた楓の手が止まった。

(ん、本当に寝ちゃった)

そぉっと本をよけ、側にあったブランケットを楓にかける。

MAKIDAIは、こっそり自分のスマホで楓の寝顔を撮ってみたり、楓の本を読んでみたり、楽しんでいた。

(寝顔、色っぽいな…。食育ってこんな勉強するんだ、へぇ…)

しばらくして、楓が目を覚ますと、MAKIDAIは何もなかったような顔をして、

「おはよ。もう、起きたの?まだ、寝てていいよ」

と優しくハグする。

「うーん、やっぱり寝ちゃったね」

手ぐしで髪を直しながら、目をしょぼつかせる。

「色っぽい寝顔だったよ」

「ん〜、色っぽくないよ〜。ん?…ねぇ、色っぽい寝顔って、どんなの?」

楓は、甘えたような声で尋ねる。

「ん、キスしたくなるような唇とか、ちょっと乱れた髪とか…、」

MAKIDAIは、楓の髪を少し摘んでみる。

「ずっと、見てたの?」

横目で訴えながら、口を尖らせる楓。

「うん」

MAKIDAIの素直な返事を聞いて、楓は、火照る頬を両手で隠す。

「照れてるの?」

面白がるMAKIDAIを尻目に、

「この歳になって、寝顔をマジマジと見られると思ってなかったから」

とすねる楓。

「いいじゃん。誉めてるのに。ダメなの?」

「ダメ」

「なんで」

「なんでって、…恥ずかしいから」

そんな楓も可愛いくて、思わず抱きしめてしまうMAKIDAI。

「なに?」

「可愛いいから、抱きしめたくなった」

MAKIDAIのぬくもりをしっかりと感じて楓は思った。

(事故は、大変なことだったけど、こうしてMAKIDAIさんの側にいられるようになって夢みたいで本当に幸せ)

「MAKIDAIさん、今日会いに来てよかった」

「うん、会いに来てくれてありがと」

〜第7話 〜 終了
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