不思議に不思議な彼女と僕
初恋の黄色いひまわり

これは、よくある話だ。

よくある、失恋の話だ。

お向かいの家に、七つ年上のお姉さんが住んでいた。

肩甲骨の辺りをサラサラと揺れる黒髪に、ぱっちりした二重の可愛らしい人。

一人っ子の彼女に弟のように可愛がられるうち、必然のように恋をした。

子供ながらに「ぼくが好き?」と真剣な気持ちで問いかけると、彼女はいつだって満面の笑みで「もちろん、大好きだよ」と答えて頭を撫でてくれる。

当然それは、同じ“好き”だと思っていた。

そう、勘違いしていた――。

ランドセルを背負っていた頃は、学校が終わるといつもお向かいにある彼女の家に入り浸る生活。

けれど学ランに袖を通すようになってからは、気恥かしさから少し家を訪ねる回数を減らしたりした。

それでも、訪ねればいつも笑顔で迎えてくれる彼女は、きっと変わらない気持ちでいてくれていると、そう思い込んでいた――。

彼女が通っていたのと同じ高校を受験し、無事に合格通知をもらった日、ドキドキする気持ちを抑えて彼女の家を訪ねた。

なんとしても第一志望の高校に合格するため、毎日勉強漬けになっていたこともあって、それは久しぶりの訪問だった。

合格通知を見せて、同じ高校だねと喜ぶ彼女に“ずっと好きでした”と、そう伝えようと心に決めていた。
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