HEAVEN ROAD
逃げたって何も変わりはしない。



そんなこと百も承知だけど、人は物事から逃げ出したくなるんだ。



弱さを隠すために逃げ出してしまう。



それなのに、この男ときたら……



偉そうに腕なんか組んで、踏ん反り返っている。



豊が頭になった理由が今になってやっとわかった気がする。



上手く説明なんてできないけれど、豊は大きいんだ。



あたしの過去を曝け出した昨日だって、特に何も言わなかった。



何が言って欲しいって思ったりもしたけど、何も言われなくて良かったと思う。



ただ聞くだけっていうのは簡単そうに見えて、難しい。



それをさらっと出来てしまう豊は本当に大きいんだ。



「何見てんだよ」



目を閉じていたはずの豊が突然目を開いた。



「自惚れんな。誰もてめぇなんか見てねぇよ」



あたしは豊からサッと視線を逸らす。



そんなあたしにふっと顔を緩ませた豊は立ち上がり、あたしの隣に腰掛けた。

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