御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「つまり、発売日に注文して頂いた分さえ納品出来たら我々の信用も守れるし、商品に対する興味も失われない。それにその後、品薄になる分には全然構わないんです。商品が人気なんだと認識してもらえますし」

爽やかな笑顔なのに『ニヤリ』という擬音が似合うのは、心の底に潜む黒さが透けてみえてるんだろう。
やっぱり敏腕営業がただの軽快好青年のワケがないもんね、と再確認する。


「なるほど!さすが係長ですね!」

井深さんが感動した!と全身で表しながら言う。

係長の黒さに気付かないのか、元から知ってるから気にならないのか。尊敬する係長の黒さなんて見えないって、そんな盲目的な事はさすがにないよなー。

ぼんやり見守っていると、井深さんがニヤリと笑った。

「この状況逆手に取って利用しようなんて黒い事、なかなか思いつけませんよ」



あ、なるほど。
井深さんも黒いから気にならないのか。営業さんの笑顔ってなかなかに怖いな。
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