カモフラージュ
約束の日。
彼に、千尋の車に乗ってもらう。
「無理言って、ごめんなさい」
逸る気持ちを抑えて、平静を装う。
「ううん、野暮用が多くてね!ハハ」
「いえ、大丈夫です」
「久しぶりに会ったからかなぁ?
また、敬語になってる」
「そうだ!タメ語で良かったんだぁ
ちょっと、緊張してるからかも」
「どうして?」
「ううん、何でもない!
静かな所で、ゆっくり話したい。
家でも良いんだけど、甥っ子がいるから。
だから、ホテルでも行こう!」
「家は行けないよー!
それに、ホテルで・・・」
彼は口篭った。
「心配しなくても
抱いてなんて言わないから!」
明るい口調でかわした。
「千尋ちゃん?」
「そんなに、心配しなくてもぉ!」
彼は、黙ってしまった。