星屑プリンセス
星屑プリンセス
〝絵を描くことが好きな女の子がいました
女の子が描いた絵を見ると、みんな笑顔になりました
ある日、怒ってばかりの王子様に出会いました
王子様はいつも難しいことを考えていて
とてもとても、忙しい人でした
なぜなら国中の人を笑顔にしたかったのです
女の子も、たくさんの人を笑顔にしたいと思っていました
女の子の絵を見た王子様は微笑みました
すると国中、笑顔になりました
たくさんの星がキラキラと光っているみたいで
とてもとても、綺麗でした
女の子は王子様のために絵を描き続けました
やがて二人は結婚して、幸せに暮らしました〟


白亜の宮殿の中央には二千の眩い幻想で輝く大きなモミの木。大地に円を描く真っ赤なポインセチアに祝福されて、天井のステンドグラスに掛けられた光の梯子からは天使が舞い降りる。

眺める光景に空想を描きながら、右手にB4の鉛筆と色鉛筆を握りスケッチブックを膝にのせ、一人夢うつつにスケッチ。視線の先にはクリスマスツリー。大理石が反射して神聖なその頂上で大きな星が光り、空中に吊られた天使のオーナメントが揺れた。
ガラス張りで開放感あふれるホテル一階の、ロビーソファに腰を下ろして二時間目に突入。十七時を過ぎて外は暗くなり、イルミネーションの光が四方に散った。
そろそろ怒られるだろうか。フロントスタッフに許可は取ったものの、客ではないのだから度を越してはいけないのだけれど……。
「忘れちゃったのかなぁ」
ため息とともに不安をもらす。私には、どうしてもここでツリーを描く必要があった。
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