L'eau, je suis important...

それぞれの思い



救急車の音が聞こえて、安心したのか、悠太は目を閉じた。


悠太を見て、改めて“死”を実感した。


“悠太が死ぬ”


そう思ったら、無意識のうちに瞳に涙が溜まっていた。



瞳を閉じた悠太を見て、さっきのことを思い出す。


悠太が堂島の言葉を聞いて、キレたときの光景はまさに“地獄絵図”。


この言葉がぴったりだった。



あんなにキレた悠太を見たのは初めてで、僕は絶句していた。


「玲くん!悠太と一緒に救急車乗ってくれ!俺達もここの後始末をしたら、すぐに向かうから!」


宏樹くんがそう言ったから、僕は救急車に乗って、悠太に付き添った。


悠太は、堂島が倒れてすぐに馬乗りになった。


そして、無言でずっと顔を殴り続けていた。


『おい!悠太!
もうやめろ!こいつ死んじまうぞ!』


宏樹くんが悠太に声をかけて、拳を掴んだけど、悠太はそれに抵抗して、宏樹くんを殴った。


『…悠太……。』


僕はかける言葉が思い浮かばなくて、蚊が鳴くような声で名前を呼んだ。


当然だけど、そんな声じゃ悠太は反応してくれず。


みんな、その光景をつばを飲んで見ていた。




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