ステイトリー・ホテルで会いましょう
ステイトリー・ホテルで会いましょう
ステイトリー・ホテル神戸は港に面したラグジュアリーホテル。ヨーロッパ調インテリアを売りにしているだけあって、予約したエグゼクティヴスイートにも、高級感ある深緑のカーペットにアンティークな猫脚のドレッサーやチェア、テーブルが置かれている。白い壁にはパリの町並みを思わせる風景画がかけられていて、二十八階の窓からは宝石のように贅沢な神戸の夜景が見える。

本当は隣の部屋を予約したかったのだけど、二ヵ月前に問い合わせたら、すでに先約が入っていた。

「それは残念だったけど……やっぱりステキ」

うっとりしてため息をつく。

今日はクリスマスイヴ。土曜ということもあって、この部屋は一泊でもとんでもない値段になっている。しがない在宅翻訳者の私には思い切った出費だ。

広いベッドにちょこんと腰かけ、馬鹿なことをしてる、と思う。実際、明日後悔しながら目を覚ますことになりそうだから。

だって、五年も前の約束を、柊が覚えているとは思えない。

彼はいつだって自分の夢に夢中だった。

ううん、それは私も同じ。
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