joy to the world !

「この階は宿泊客は来ないけど、代わりに大切な仕事で扱うお客様が多いんだよ。稀に迷い込む人もいるらしいけどね」
「ホテルに会議室とかあるんすね……」

 落ち着かない様子で周囲を見回しながら、バイトの新人―――上村くんは買ってきた長リボンを私に手渡す。
 充分すぎるくらい用意してあった金色のリボンが足りなくなってしまったのだ。

「はいありがと。お疲れ」
「ホントすんません」
「いいよ。あったんだから」

 こんな大事な仕事で装飾に使う雑貨が足りなくなるミスなんて、私はしない。
 してはいけないって言った方が正しい。副店長の名がすたる。
 
 原因は今謝った通り、上村くんだった。
 水を替える際見事に水浸しにしてくれたわけで。
 濡れただけだから完全に使えなくなったわけじゃないけど、上がりの時間から逆算するとどう考えても間に合わなかった。 

 事務所でドライヤー等を借りて乾かしても、リボンを遠目から見た時の印象がだいぶ変わってしまう。



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