純情シンデレラ
私が「松本さん!」と声をかける前に、松本さんの方が私に気づいたのか。
松本さんは、いけばなの時のように、私めがけて一直線にズンズン歩いてきた。

「おつかれさまです」
「俺に用か」
「あ、はい。えっと・・」と言い淀んだ私は、チラリと周囲を見渡した。

今、私たちが立っているのは、ちょうど会社の出入口付近なので、仕事を終えた社員のみなさんが、ぞろぞろと外に向かって歩いている。
彼らは私たちの会話を聞く気なんてないだろうけど・・内容が姫路さんのことだから、なるべく誰にも聞かれたくないと思った私は、松本さんが着ている上着の袖に手を添えて、私たちが利用しているJRの駅とは反対方向になる、人気が少なめの方に向かって歩き出した。
松本さんは、一瞬怪訝な顔を向けたけど、何も言わず、私と一緒に歩いてくれた。

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