純情シンデレラ
電算課で一番仲良くしている素子さんは、朝、私の姿を見つけた途端、駆け寄ってきて。
私をそっと、でもギューッと抱きしめてくれた。
きっと姫路さんのことで、私がまだ気落ちしていると察してくれたのだろう。
私より1年長くここに勤めている素子さんは、その分私よりも多く、姫路さんの“意地悪な”面を見聞きしてきたこともあって、他の社員同様、姫路さんの葬儀には参列していないけれど、素子さんなりに姫路さんの死を悼んでいる気持ちは、私にも十分伝わって来た。
葬儀の翌日、私に電話もくれたし、「今からそっちに行くよ」とも言ってくれた。それは断ったけど・・・あの人がいると思ったから・・・。

でも、あの人はもういなかった。
そして・・・それ以来、大柄なあの人に会ってない・・・。

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