お別れ記念日


寒いので、とりあえずホテルに入る。


建物に入ってすぐに目に入ったのはたくさんの花が飾られたオプジェ。


その花のオプジェの上に大きなシャンデリアが飾られている。


そしてその奥は上の階に続く階段になっている。


自分の身長の何倍あるんだろうと思うくらい高い天井。


見上げてたら吸い込まれてしまいそうだ。


宏樹さんの名前で予約してるし、仮に部屋に入れても自分だけが先に入るのもなんだか嫌だ。


とりあえずロビーで宏樹さんが来るのを待とう。


ソファーを見つけ、そこに腰をかける。


外と比べてかなり暖かい。


グルグルに巻き付けたマフラーを外す。



──今日は付き合って2年の記念日だ。


宏樹さんとの出会いは職場だった。


元々同じ部署にいて、彼はわたしの上司だった。


とても仕事が出来る人で、仕事している姿がかっこいいなと思っていた。


仕事で何かやらかした時、必ずフォローをしてくれた。


上司だから当たり前って言ったら当たり前なんだけど、単純なわたしはそんな彼に惹かれていった。


周りの人に内緒で猛アピールをし、やっと付き合えることになったのが2年前の今日。


全国チェーンの居酒屋でビールを飲みながら“オレと付き合ってみるか?“と、ロマンチックさの欠片もない雰囲気の中で言われた。


が、その時のわたしは付き合えることが嬉しすぎて泣いた。


わたしは何においても単純、そしてよく泣く。


オトナの女性らしい、とは言えないかもしれない。


それでも、彼とは上手くやってきたつもりだ。


もちろん、喧嘩した時もあったけど、その度に仲直りをしてきた。


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