私、実は…。

ハッピーバースデー

男は、追い詰められていた。

神の道をえらばされ、再び歩き始めていたが、やはり、追い詰められていた。

どこに拠り所をおけばいいのかは、分からなかった。

しかし、戻るわけにはいかない。

いかないというより、戻るような場所はない。

男は追い詰められていた。

地味に真綿の優しさにくるまれるように、追い詰められていた。

解決法は、分からなかった。

幸せを快楽じゃないと定めてから、彼は、神を求め続けなければならなくなった。

喜びは、ない。

ご機嫌伺いばかりの毎日に、彼はほとほと、嫌気がさした。

マスター「どうしたのだい?」

男「私は逃げ出したいのです。」

マスター「逃げ出せばいいじゃないか。」

男「逃げ出せる訳ないじゃないですか。」

マスター「どこに行きたい?ん?」

男「火星にでも行きたいですね。」

マスター「現実的じゃないな。。」

男「分かってますよ。分かってて、ムチャクチャ言ってんですよ」

マスター「しかし、よく言った!」

男「わ、びっくった~。いっきなし、大きな声出さんで下さいよ~。」

マスター「ごめんね、はいお詫びの10円。」

男「いや、何の制度なんですか。」

マスター「お詫びに10円やる制度。」
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