恋の音はすぐそばに
「…大丈夫。菜緒くんは目を覚ますよ」


「でもっ」


「天音、菜緒くんにはね、中学生の時から叶えたい夢があるの」


「夢?」


菜緒先輩の夢…。


私は聞いたことがない。


それを心羽は知ってる。


2人の絆を垣間見て…悔しくて、でも羨ましくて。


複雑だ。


「うん、だから菜緒くんはこんなところで死なないよ」


〝だから大丈夫〟


そう言って笑う心羽は、いつもの心羽の笑顔で。


それが不安でいっぱいの私を安心させてくれたんだ。


まだ不安はあるけど…。


「…そうだよね。私、菜緒先輩を信じる」


「ん、それでこそ天音ね」


ニコッと笑う心羽に、私も笑い返す。


心羽の笑顔にすごく安心する。


だけどね、私は知ってるんだ。


それが心羽の強がりだって。


私を抱きしめるその手が、微かに震えていることを。


ごめんね、ありがとう…。




< 44 / 51 >

この作品をシェア

pagetop