【完】最後の恋
傷跡
少しずつ、春を迎えようとしているこの季節…。
北国には、まだ桜は遠い…。
三月に入り、アキに辞令が出た。
朝、オフィスに向かう廊下に、その辞令は張り出されていた。
いつもはチラッとしか見ない辞令だが、今年は足を止めて見ていた。
「星川 アキ、四月一日を持って、商品開発管理部に異動を命じる」
この商品開発管理部は、当初十月に出来る予定だった部署。
社長に言われてから、覚悟はしていた…。
でも、実際に辞令を見ると、ショックだった…
『とうとう出ちゃった…』
まさか、企画部から離れる日が来るなんて、
あの時までは考えた事もなかった…。
オフィスに入ったアキは、すぐに席に座り、
ボーっとしていた。