桜龍

秘密の会話

――ギィ

後ろを振り返れば魁斗がいた

驚くようで面白いものを見つけた様な表情をした

『ん?何?』

あたしのタバコを持っている手を見て

「お前、それ…」

見られちゃったか…

まぁ、いっか

『あぁ、言ったでしょう。どう思われているか知らないけどそこまでいい子じゃないって。』

あたしは、今までの生き方を否定するつもりもない。

否定してしまえば今までの自分を否定している事と同じだから、否定はしない。

「ふっ、そうかよ…」

そう言って隣に来てタバコを吸い始めた

『あの部屋では吸わないの?』

部屋の中には灰皿も置いてあるのだからそこで吸えばいいのに…

この屋上にも灰皿が設置されているが、わざわざここで吸う必要もないだろう

「吸うが、お前の帰りが遅いからタバコ吸うついでに見に来た。電話してたのか?」

内容は聞いてなくても電話してたのは分かったのか

『うん、友達からだった』

友達…

嘘ではないが、1番この答えが無難だろう…

「ふーん」

まるで興味があるのかないのか分らないような返答をした魁斗を見た

その視線に気づいたのか恥ずかしそうに

「なんだ?俺の顔になんか付いてるか?」

魁斗の顔をまじまじと見つめると誰かと重なるのだが誰なのかは分らない

いや、分からないようにしているだけなのかもしれない

たぶん、分かっているのに無意識に思い出させないようにしているのだ

『ううん、なんでもない…ただ…』

「なんだ?」

あたしは、視線を上へそらし

『綺麗な顔してるなーって、思っただけ』

本当に白龍も千龍の人も顔は整っている

魁斗も本当に綺麗だ…


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