こい


本家以外で春之と顔を合わせることは稀だったけど、一度だけ一緒に近くの公園に行ったことがある。
小さくて雑草がボウボウに育っているようなところで遊具と呼べるのは錆びた滑り台のみ。
だけど珍しく砂場があった。
今だったら問題になるだろうけど、管理の悪いその砂場の中にはたくさんのガラス片が落ちていた。
砂に削られて角が取れ、すりガラスのように曇った欠片は、水で濡れたときだけ透明に輝いた。
あの時の私にとって、それはもう魔法でしかない。
ほとんどは白でたまに薄い青や緑。
元々が割れたビンか何かだなんて考えもつかず、私は大喜びでその宝石を集めた。

「あったよ」

キャアキャア騒ぐ私の声を黙って聞きながら、春之も一緒に探してくれた。

あらかたガラス片を集め終えると、今度は砂を全部使って大きな滑り台を作りたいと言った。
春之はやっぱり黙々と砂を集め、借りてきたバケツに水を汲んできて、ペタペタと固めながら滑り台を作ってくれた。
おかげで高く積み上げた山の頂点から、ぐるっとカーブを描きながら下へ続く、とても立派な滑り台ができた。

「ねえねえ春之、水を流してみて!」

このカーブを水が流れるところを見てみたいと思った。
川のように流れる様を想像して、私はすでに嬉しくなっていた。
きっと春之はその結果がどうなるのかわかっていたと思う。
それでも何も言わず、水を汲んできて流してくれた。
水は、カーブを描くことなく頂点から一気に滑り台を崩した。
あんなに何度も手でたたいて丈夫に作ったのに、あまりにあっけない姿だった。

私は大きな声をあげて泣いた。
とてもショックだったせいで、その後のことはあまり覚えていない。
大事に大事に集めたガラス片も、多分置いてきてしまったのだろう。
困った顔の春之だけはっきりと覚えている。

春之と出かけたのは、背負われた夜宮のときと、あの公園。
それから、あと一度だけだ。






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