俺様作家に振り回されてます!

3

「ここって……?」

先生が車を停めたのは、三十階建ての重厚な建物の前だった。日本でも指折りの高級リゾートホテル。有名俳優やモデルがお忍びで泊まりに来るという……。

「島倉探偵は思い切ったことをしましたね」

私の言葉を聞いて、先生はニヤッと笑う。

「だろ? これからのシチュをツンデレ編集者としてどう感じるか教えてほしい」
「ツンデレじゃありませんってば」
「俺はつれないおまえがデレたところを見たいんだ」

さっそく島倉は桜に甘いセリフを吐くわけですか。

車を降りて、先生はキーを駐車係に渡した。先生と一緒にエントランスに入る。磨き上げられたフロアに豪華なシャンデリア。大きな窓ガラスからは暮れなずむ海が見える。

「まずはそこのブティックでディナー用のドレスを選んできて」
「えっ!?」

先生が指さす方を見たら、きらびやかなショーウィンドウが目に入った。

「実地調査」

そう言われれば従うしかない。私は慣れない高級な雰囲気に気後れしながら、ガラスのドアから中に入った。

「いらっしゃいませ」

さすがに店員さんも洗練された立居振舞だ。

「ディナー用のドレスを……」
「かしこまりました」
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