ネガティブ女子とヘタレ男子

1-Aのイケメンくん


千秋ちゃんと話していると、突然教室のざわめきが強くなった。

女の子達からの黄色い声が鼓膜を揺らし、キーンっと高い音が耳の中で響いている。

「な、なに…この騒ぎは。」

話し合いをしていたはずの教室は、私達の周りには男の子、黒板の前には女の子の、不思議な二つの円(えん)が出来上がっていた。

「"ひろくんーーー"」

座っている私からは女の子に囲まれている中心が誰なのかまでは見えなかったが、立っていた千秋ちゃんは見えたのだろう。千秋ちゃんは女の子の間をぬって、中心へと向かって行く。

「千秋ちゃん?」

いつもなら自分から目立つ行動をしない千秋ちゃん。私と同じで目立つ事が苦手な彼女が、女の子達の隙間をぬって入ってしまった。

驚いた私は、慌てて立ち上がり中心を見やった。

すると、そこにはクラスで何度か見かけたことのある少し背の高い男の子と、横に並ぶ小さな千秋ちゃんの姿。

千秋ちゃんは男の子の上着を掴んでグイっと引っ張りながら教室から出ていってしまった。

女の子達は、あまりに突然な出来事に少しばかり呆けており、誰も二人の後をすぐ追いかけることは出来なかった。

(お、追いかけるべきなのかな…。)

友達でもない私が、二人の後を追いかけて良いものか…。そんなことを考えてると、立ち上がった体は固まって動かなくなってしまう。チラホラと二人を追いかける女の子が出てきて、「私も行かなきゃ。」と気持ちが急いたからか、漸(ようや)くその場から足を動かすことができた。

何処に行ったのかも分からない二人を探す。

教室から離れるときにチラリと見えた黒板には、『1-Aの美男枠。横場大樹。美人枠風深爽。』と書かれていた。




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