ネガティブ女子とヘタレ男子

歩き始めた子供達


暮人やチィとわかれて数十分。
生徒棟ではない空き教室へ呼び出され来てみれば、待っていたのは重い扉と埃っぽい机や椅子だけ。

呼び出した本人の姿は無く、どういう事か分からないまま近くに置いてあった机に腰かけ待ち続けた。

「もういいや。」と腰を上げれば、タイミングを見計らったように聞こえてきた靴の音。

ーーー自然と眉間に力が入ったのが分かった。

ガラガラと音を立てて入って来たヤツは、遅れてきた謝罪もなしに笑顔で近寄った。

「てーんちゃーんっ!」

訂正。飛び付いてきた。

「おせえよ。」

「ごめんね、女の子達が離してくれなくて。てんちゃんと会うのに女の子連れてなんて、チィちゃんが怒っちゃうから。ちゃんと撒いてきたよ。」

「…チィは怒らねえよ。」

俺よりも少し高い身長に、長い脚。小さい顔にふわふわした髪の毛がさらさらと落ちてきた。

(暮人が見たらまたイケメン爆発とか叫ぶんだろうな。)

この場に居ない親友を思い浮かべて穏やかになる心とは反対に、重たい巨体をなんとか離れさせようと力一杯押し退ける体。

じたばたと暴れたのが効を成したのか、ようやく離れた男は嬉しそうに微笑んだ。

無邪気な子供のように笑う顔に、光の無い瞳が不似合いなコイツ。

俺とチィのもう一人の幼馴染み。

「ーー大樹。お前、何で風深さんと付き合ったの。」

「前にも話したでしょ、ずっと好きだったからって。告白したらオッケーしてもらえたんだ。」

「難攻不落(なんこうふらく)の風深さんがそう簡単に了承(了承)するなんて、考えられねえ気がすんだけどな。」

「ふふ、ラッキーだったのかな。」

「…はあ、真面目に話す気あんのお前。」

「てんちゃんと話すの久しぶりだから嬉しくて、ごめんね。」

「…分かったよ。その代わり、今みたいに話さなかったり、関係ない話で話を変えるような事したら教室戻るから。」



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