秘密 ~ホテル・ストーリー~
 すっかり寛いでる未希を横目に、持ってきた資料に目を通す。
「ん……」
未希は、亮平にもたれかかって、すでに目を閉じている。

安心したような顔。
眠って少しでもその酷い顔、何とかなればいいけどな。
まあ、仕事では、お前のことは当てにしてないけど。

展示場のブースのセッティングを任されるのは、初めてじゃない。
明日の土曜日までに環境を整えて、見に来た客に万全の状態で備えておかなくてはならない。

展示会には、社長以下他の重役も見に来ると聞いていた。
だから失敗はできない。慎重すぎるくらいに準備をしておかなければと、何度もチェックした。

集中してたのか、確認が終わる頃には、あと数分で東京駅に着くところだった。

慌てて網棚から荷物を下ろすと、未希の荷物が隣に乗っかったままなのに気が付いた。

未希は、ぐっすり寝てしまって、駅に着くっていうのに気付かず眠っている。

「おい、いい加減起きろって」
一応、優しく揺すって起こしたけれど、びくともしなかった。彼は、あきらめて網棚の荷物を、未希の体の上にドサッと置いた。

「痛ったーいい!」びっくりして未希が起き出すのを見て、亮平は先に行くぞと彼女を置いて通路に出た。
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