私のご主人様

「こーとちゃん、たまごー!」

「いつも卵焼きだねぇ」

「ことちゃんの卵焼きは幸せの味~」

ほややんと言わんばかりのオーラを出すふわちゃん(本人から呼んでと言われたので恐れ多くも呼ばせてもらってる)。見てるこっちが幸せになっちゃう。

あ、忘れてた。

ザ・庶民の私がなぜこの香蘭学園に来ているかというと、私のお仕事にも関係ある。

「琴葉」

かけられた声に反射的に立ち上がり、声をかけてきた男の子に向かう。

「はい、お坊っちゃま」

中学生ながら身長170㎝の高身長。きりっとした眉に、軽くつり上がった目。筋のとおった鼻。体つきも細すぎず、図体がよすぎると言うこともない。…うん、一言に言えばイケメンさん。

精練なお顔が不快の色に染まる。

「…学校ではそれ、やめてくれって言ってるだろ」

「っは!…すみません。つい…」

いけないいけない。学校ではお名前でお呼びするんでした。
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