そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「......ありがとう。
真由がそう言ってくれるなら、本当に上手くいくような気がしてきたよ。やるだけやってみる」

「慎吾って人の意見を素直に聞き入れてくれるよね。
そういうとこ、すごく好き」
  

あっさりと私の意見を聞き入れた慎吾に、内心ほくそ笑みながらも、いつもの癒し系笑顔をみせると。

急に抱き寄せられたので、もちろん身を任せる。


やっぱり、男は扱いやすい男に限るわね。

良く言えば素直、悪く言えば単純。

どうしようもないお人好しで騙されやすいけど、逆に考えると、我の強すぎる男よりも柔軟性があって扱いやすいとも言える。


ダメだ残念だと言われている慎吾。

だけど、付き合ってみると、そんなに壊滅的に残念だとも思えなくなってきた。

自分に自信がなくて今までは色々なことが上手くいっていないだけで、実はしっかりしてるところもある。

もっと周りに恵まれて、上手い具合に慎吾を導いてくれる人がいたら、成功できるんじゃない?

つまり、......。

そういうことなら、がんばっちゃうわよ?

遺産争族はもちろんだけど、お金はあればあるだけ有り難い。


「真由だからだよ。
真由がいてくれたら、何でもできる気がする」


この人の良さそうな笑顔も、バカっぽい発言も、以前は残念だとしか思わなかったけど、最近は一周まわって愛しく思えてきたから不思議だ。

お人好しも限界を越えると、どうやら違うものに変化するらしい。

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