そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
受付の時間を数分過ぎた頃に突然押しかけてきたかと思えば、会って当たり前だという態度の慎吾の一番上の兄。


「恐れ入りますが、お約束はいただいてますか?」

「は?約束なんて必要なの?
俺がきたって慎吾に言ってよ」


ダークブルーのスーツを着こなしている姿はさすがだけど、しかしその俺様御曹司様な態度には人の話きいてんのかと言いたくなる。 


「失礼ですが、ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」


何を言っても、慎吾に会いにきたの一点張り。
言えない用事なら、仕事中以外にすませてよ。


一応内線で慎吾に伝えると、案の定仕事中だからと暗に追い払うように言われたので、やんわりとその旨を伝える。


「ま、いいや。
仕事終わるまで待つから、時間つぶすのに付き合って」


......。

この仕事をしていれば、色々な人間に出くわすとはいえ、ここまでマイペースというか失礼な人間もなかなかいない。

さすが御曹司さま。
< 57 / 80 >

この作品をシェア

pagetop