涙のYOKOHAMA

☆☆☆☆

ううん、と、私は首を振った。首を振ることしか、できなかった。

「じゃあ、どうしてここに?」

大きな身体が、ドサッとソファに座ると、私はフワンと飛んでしまいそうになる。

いつもは存在感がないのに。夢の中ではやけにリアルだ。

「クリスマスやから。寂しかった」

せめて夢の中では、素直でかわいい私でいたい。こぼれ落ちる涙を、拭いもせずに答えた。

「キャンセルしなくてよかった」

寿彦さんが長い指で、私の涙を拭うと立ち上がり、私に手を差し伸べた。

「クリスマスディナーをしよう」

その手にそっと手を置くと、ギュッと握られた。ぎこちないエスコートに、思わず頰が緩んだ。

その瞬間、これは夢ではなく、現実だと気がついた。

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