こんな男に誰がした!
「どんな理由?」
「他言無用よ。意に添わない縁談から逃げるためよ。私たちの立場は、あなたもよく知っているでしょ。」
「じゃ、君の理想って言うのは?」
「見た目は和兄さんみたいな男性が好きよ。人間的には、自分の考えをしっかり持ち、女性に誠実な人!」
「だって、和人さんが理想って、言ったよね?だから、俺はそうなるように努力したのに。」
「悪かったわ。まさか表面上の和兄さんを見習うとは、思わなかったのよ。いいわ、もう一度チャンスをあげる。あなたと付き合うわ。」
「本当に?」
「ええ、付き合う中で真のあなたを見せてくれれば、私の気持ちも変わるかもしれないでしょ。これからよろしくね。」
「俺、頑張るよ。本当の俺を見て判断して。」
連絡先を交換して、彼女を家に送った。
「今日は、ありがとう!また、連絡するよ。」
「ええ、待っている。」
帰宅すると、母が待ち構えていた。
「お話は、どうだったの?」
「うん、一応付き合ってみることにしたから。」
母は、パァと明るい顔をみせて、
「母さん、嬉しいわ。弥生さんがお嫁さんになってくれるなんて。」
「母さん、まだ付き合うだけだよ。気が早いなあ。」
と言いながら、俺は内心、近い将来そうなることを考え、にやけていた。