こんな男に誰がした!


この撮影で、結構俺は監督に気に入られたらしく、カンナさんから、これを機会にバイトでモデルをやってみないか、と言う打診があった。

両親に相談すると、何事も経験だからと、あっさりと許可が降りた。

将来の会社でのことも考えて、正体を明かさない方向で、と返答した。

浩輝の名前から、輝 (ひかる)と言う芸名で正体をなるべく隠してやってみようと、カンナさんから連絡があった。


ポスターは、評判がよく、来春のポスターも俺とさやかさんで行くと言うことだった。

あれから、さやかさんの方から、月に2回ほど連絡がある。その時は、世間の目を気にして、ホテルの部屋でルームサービスを頼み、その後彼女を抱く。

そしてわかったことは、俺は、誰とでも寝ることはできないと言うこと。

大学で飲んだ後に誘われても、それに乗ったりできない。

愛していないのにさやかさんを抱けるが、同時進行で、他の誰かれ構わずに複数の女性と関係を持ちたいとは、思わない。





これで、少しは、弥生の理想、花園和人に近づいたかもしれない。


しかし、見た目は良くなったし、もててもいるが、心は満たされてはいない。

弥生のあの笑顔を思い出す度に会いたくなる。

今頃、イギリスで学んでいるのだろう。

1年後のその日を俺は待ち望んでいるのだ。
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