もう一度出会えたら
後ろは振り向かずにそのまま歩き出す。


2歳児とはいえ寝ている子供はズッシリと重い。


一度立ち止まってしまうともう歩けなくなりそうになるのに、私は立ち止まってしまった。


電車が走り出す音に混じって後ろから


『菜々さん』 って呼ばれた気がしたから。


反射的に振り返ると、そこには涼くんが立っていた。


「…どうしたんですか?」


彼は私の目の前まで来ると


『お子さん、寝てしまったんですよね。あなた1人で大変だと思ったので送っていきます。』


私の返事を聞く前に、私の腕から蓮をそっと抱き上げた。


どうして彼はこんなに親切にしてくれるんだろう?


これも私が逃げないための保険?


『道案内はお願いします』


その場に立ちすくんだままの私に彼が振り返った。
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