君は私の人生の、輝く太陽。
2章

ウシノシタクサ





朝、私は学校へ行く準備を始めた。





制服も、バックも、教科書やノートも、全部涼香のもの。




遥香だってバレないためには、こういうところも徹底しなければならない。





朝ごはんを食べて、支度をして。





涼香が生きていた頃と何も変わらない日常。





「行ってきまーす!」





私は、いつも通りの声でそう言った。






「・・・いってらっしゃい。」





お母さんも返してくれる。





「おはよ!」





「直斗!おっはよー!」




家の前では直斗が待っていた。





2人で並んで歩き出す。





話している間、直斗は1度も"涼香"と呼ばなかった。




学校に着くと、痛いくらいの視線を感じる。





ヒソヒソと話す声も聞こえた。





おそらく、遥香のことを言っているんだろう。






「あの子でしょ?一緒に事故にあって、双子の兄弟が亡くなったのって。かわいそ〜」





「・・・可愛そうだけどさ〜。よくあんな平然としてられるよね〜」





わざと聞こえるように言っている人もいる。





なんでそんなふうに言われなくちゃいけないの?




「・・・大丈夫か?」





直斗が心配そうに私の顔を覗き込む。





「大丈夫だよー!」





私はそれに、笑顔で答えた。





大丈夫だと自分に言い聞かせないと、私が壊れてしまいそうで。





私たちはクラスの前で別れた。





私が"遥香"の時は同じクラスだったけれど、今の私は"涼香"だから。





教室に私が"遥香"だとわかってくれる人がいないのはとても辛い。






けれど、これは仕方がないことなんだ。






だって私は涼香だから。






私は教室のドアを開けた。





「・・・っ涼香!!!」






私のことを捉えたクラスの人達は、一瞬目を見開いて固まった。






そして、1人の女の子が抱きついてきた。





確かこの子は────





「莉心(リコ)、苦しい・・・」





「ああ!ごめんねっ!嬉しくてつい!」





彼女は寺内莉心(テラウチ)。





このクラスで1番涼香と仲が良かった子。





涼香の友達は、私の友達でもあったから、全員の名前を知っている。





涼香がなんて呼んでいてのかも。






私は席につこうとした。





けれど、涼香の席を知らない。





席を聞いたら、不審に思われる。





どうしよう・・・。




「・・・あ!」





私が心の中で焦っていた時、莉心が思い出したように、突然声を上げた。






「ごめんごめん!席わかんないでしょ?・・・席替えしたんだー!」





莉心の言葉にホッとした。






とても、ラッキーだと思った。





「涼香の席はこっちだよー!」





案内された先は、窓側の後ろから2番目だった。





その後も、休み時間の度に莉心が、私の席にやって来てずっと話していた。





帰りも直斗と一緒で。





家の前で別れた。


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